twitter投稿140字ロイアイ

2015/04/24up

彼女の素っ気ない態度が、かえって昨夜の記憶を呼び起こす。禁欲的な軍服に隠された、熱く瑞々しい肢体。白い喉から漏れる声、渦巻く欲に耐えられず曇る眼差し。それを知るのは果たして自分だけなのか。自分だけであって欲しい。過去を思うと気が狂う。これは美しい副官を持つ者だけの、苦悩。

「どうした中尉。迷っているのか」いいえ。迷うどころか狂信しています。盲信しています。そう伝えたら彼は疎ましがるだろうか。恐れるだろうか。「いえ」短く答えて、引鉄をひいた。私は務めを果たすだけでいい。そこにある思いは伝えなくてもいい。ただ、もの問いたげな彼の視線が痛かった。

(貴方はロイ×リザで『自分だけ知ってればいい』をお題にして140文字SSを書いてください。http://shindanmaker.com/375517)

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背中を任せた女が私の後ろを歩いている。まるで影のように付き従っている。規則正しい軍靴の音でそれを知る。私が振り向いて彼女を見ることはない。万が一にも、知られてはならないから。後ろではなく隣を歩けと言いたいのを。今すぐ抱き寄せて唇を奪い、この女は永久に私のものだと叫びたいのを。

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いつか私は、貴方の隣で微笑む女性に、祝福の言葉を述べるのだろうか。お幸せに、と。今から覚悟をしておけば、その日を冷静に迎えることができるだろうか。貴方の背中を狙い、撃てず、そして銃口をこめかみに当てる自分を思い浮かべて私は笑った。人並みに嫉妬なんかしている自分を、嘲笑った。

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ふわり、と腕に温かみを感じた。横を見ると、珍しくリザの方から距離を縮めてきたらしかった。そっと彼女の腕をとり、自分の腕に絡めながら言った。「もうじき秋になるな」人恋しいのは季節のせい。腕を組むにもそんな言い訳が必要なのが、私と彼女だ。そんな付き合いを、実は…気に入っている。

2012/05/21up

「あの、大佐。これは……?」乱暴に赤字でバツをつけた書類を見て、君は戸惑い気味に聞く。「見ての通り。やり直しだ」有能な副官であるという自負が傷ついたのか「なぜですか」とは聞いてこず、彼女は黙って踵を返した。全ては、そのうなじに残る痕のせいなんだがな。よその男の所へなど帰さないぞ。

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鶏肉を料理した手が、いつまでもぬるついて気持ちが悪い。石鹸を泡立て、ごしごしと力任せにこすっていたら、大佐が言った。「初めて殺したときのように執拗に洗うんだな」「……見たことがないでしょう」「見なくてもわかる」洗い落とせないのが血だけではないことも、この人は知っているのだろう。

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「…軍服にチョコレートは似合わんな」「…軍服に花束も似合いません」「そうだな…」「そうですよ」「すいません大佐と中尉、二人とも仕事しないんなら早く帰ってもらえませんかっていうかとっととデート行け」「! 貴様、上官になんたる口の聞き方だ!」「行きましょうか、大佐」「う、うむ…」
※バレンタインデーにツイートしました

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「ひゃっ!」素っ頓狂な声を上げてしまい、赤面する。「な、何するんですか!?」「だってリザのうなじが可愛いから」「だからって舐めなくても…っ!」髪を切ってしまったことを残念がっていたのもつかの間、こんな悪戯をしかけてくる、このひとは私の上官、そして…大事なひと。

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君が罪から逃れられず、罰を受けることを望むのなら、私の焔で君を焼きつくそう。その業火はやがて、私の身をも包むだろう。そうしてわずかに残る白い欠片は、君の骨か、私の骨か。最後に我々は一つになる。混じり合い、土へと還ってゆくのだ。置く墓石もなく、飾る花もなく、祈りの言葉もない。

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目を背けたい現実を前にして、こんなはずではなかった、と言うのは愚かだ。彼女が私と出会わなかったら、秘伝を伝えなかったら、軍人にならなかったら……それらの仮定は無意味だ。わかっていながら、虚しく「もし」を繰り返す、午前四時。中尉、君の護っている相手はどうしようもない臆病者だよ。

2011/07/03up

いつからだろうか、身体が折れそうなほど強く抱きしめるようになったのは。大丈夫だ、もう彼女がどこかへ行ってしまう心配はない。「たい、さ・・・・・・」途切れ途切れの声で呼ばれて目を開けると、首に巻かれた白い包帯が飛び込んでくる。駄目だ、私はまだこの手の力を緩めることはできそうにないよ。

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くたり、と寄りかかられた肩の重みでようやく気づく。「リザ、もしかして酔っているのか?」「いいえ、ちっとも」とろんとした目で私を見つめ返す君は、凶悪なまでに可愛い。「酔っていないならもう一杯飲めるかな」「ええ、いただきます」「いただきますはこちらの台詞だな」「え?」「なんでもない」

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弾倉にはあと3発。予備はもうない。狙うのは額?心臓?息を吐いて引鉄を引いた。撃ち抜いたのは膝。相手も弾切れなのだから、動きさえ封じればいいのだ。無線で「GJ!」という声。私だけの判断じゃない。「頭で冷静に考え、胸で熱くとらえて、腹で決めるんだよ」上官の言葉が心をよぎったから。

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何度もキスしながら、髪をくしゃくしゃと撫で回される。「もう……もつれてしまいます」「だって勿体ないから」「何がです」「もうすぐ、切ってしまうんだろう」伸ばしていた髪を切ると決めたことは、誰にも言ってないのに。全てお見通しなのだろうか。私が貴方を好きで好きで仕方ないことも。

2011/03/10up

埃まみれになったレーションの包装を、無造作に歯でばりりと破った。中身を頬張り咀嚼して、飲みくだす。必要なカロリーは摂った。あとはもう弾丸が尽きるまで撃つだけだ。「……終わったらきみの作ったシチューが食べたいな」隣でぬけぬけと戯言を言う上官が憎らしくて愛おしい、戦場の午後。

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「誰が撫でていいと言いましたか」「触れているだけだ」「どう違うんですか」「だって安心するから」「答えになっていません。というか、私の安眠も尊重して下さい」「眠れないなら眠れないんでいいんだが」「は?」「だからもう一度」「だ、め、で、す」「じゃあ触れるだけ。それで寝る」最初に戻る。

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ジッと火花が散った一瞬後に爆発。爆破で取りこぼした敵は、副官が躊躇なく無駄なく仕留めていく。どれだけ凄惨な現場でも彼女は私の側から離れない。薔薇やチョコレートで愛を囁く恋人同士を羨む暇があるならば、一分でも長く生き延びる方法を考えるのが私の愛だ。愛なんて呼べるとすれば、の話だが。

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二人きりで過ごしていると、大佐が寂しそうな表情を浮かべることがある。気の利かない私に不満なのかもしれない。美しくもなく、器用でもない、こんな女のどこがいいのだろうと思う。勇気を出して聞いてみた。「君のことを好きすぎて寂しいのさ」という返答。こっちは別れる覚悟すらしたというのに。

2010/12/21up

肝心な時に限って目を逸らすのはどうして? その質問を私は飲み込んだ。答え次第によっては行為をやめなければならないから。男と車は急にとまれないんだ。口づけると君は素直に目を閉じた。「好きだよ」 耳元で囁いても、彼女が心を動かしたような感じはしない。仕方ない、答えは身体に聞くしかない。

◆◆◆

「あまり見つめないでいただけますか」「何故? こんなに綺麗なのに」「……」言葉に詰まる私を見て、大佐はすうっと目を細めて微笑った。はしたない表情を浮かべているのを見られたくない、というのもあるけれど、貴方の漆黒の瞳に見つめられると、どんどん理性のたがが緩んでいくのが怖いの。

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「や……っ、大佐……!」声に悲鳴じみたものが混じっても、私は決して手を止めない。その代わり君の顔を見つめる。潤んだ目をみれば「もっと」と言っているのが分かる。君は素直じゃない上に貪欲だ。私のことを厄介な上司だと思っているかもしれないが、君も難敵だよ。さあ、もっと声を聞かせるんだ。

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やめて下さいと言っても、彼は決してやめない。かと言って、やめないでなんて言ったらどうなって しまうのだろう。頭の芯がぼうっと痺れて何も考えられなくなってくる。大佐はそんな私を見おろして少し笑むと、またキスを再開した。君のことなんてお見通しだと言わんばかりに。口惜しい、けれど愛しい。

◆◆◆

「大佐? どうしたんですか?」腕の中の彼女が不安げに見上げる。ひたすら頂点を目指し突っ走る若者とは違う。一瞬でも長く君を抱いていたいんだと言えればいいが、そんなセンチメンタルな自分は見せたくなかった。すると彼女が腕をまわして強く抱きしめてきた。まだ夜は長いです、というかのように。

2010/11/14up

久しぶりの逢瀬、まず最初に君の手を握りしめた。指の一本一本に口づけて、この手が好きだと言ったら笑われた。綺麗でも何でもありませんよと言いたいのだろう。確かに銃器を扱う君の手は、繊細とも華奢ともいえない。でもこれ以上に美しい手があるだろうか。私を護り、支え、そして愛してくれる手だ。

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貴方に見つめられると落ち着かない。これ以上溺れたくない、依存したくない。だからもう触れないでほしい。触れられた所から鎧を剥ぎ取られていくような気がするから。そう願っているのに強く抱きしめられると、ああ、私はこうされたかったんだ、と痛感する。リザ、と名前を呼ばれて私はまた流される。

◆◆◆

いくら求めても満たされない。単なる欲望ではなく渇きを癒すように、失った物を埋めるように、私は君がほしい。すがりつくように抱きついたら、あやすように背中をさすられた。なんと無様なことか。リザ、君のせいだ、君が何もかも悪いんだ。むしょうに腹が立って私は彼女が壊れてしまう寸前まで抱く。

2010/10/24up

泥と血にまみれて野垂れ死んでもおかしくなかったはずの私が、なぜこんな所にこんな格好でいるのだろう。軍服でなく純白のドレス、銃でなく薔薇のブーケ。ベールごしにみる貴方は、ああ、どうして私より泣きそうな顔をしているの。バージンロードを進む足が震える。

◆◆◆

たとえばこんな未来はどうだろう。私が話して聞かせると君は呆れたような顔で笑い、そして、ふっと思いつめたような表情を浮かべた。ただ君のことを未来の大総統夫人、と呼んだだけなんだが。だいたい君は頭でものを考えすぎる。だから私は無理やりにキスをして君の思考をストップさせる。

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「なかなかに、したたかじゃないか? 君も」「何のことです」「エンヴィーだよ。二人きりの時は名前で呼ぶ、と言って化けの皮を剥いだ話を思い出してね」「真っ赤な嘘でしたが引っかかってくれました」「嘘じゃないだろう? リザ……もう少し側へ来てくれ」「大佐……」「呼、び、方」「……ロイ」

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「ここもあと5分しかもたないな」「そうですね、敵の数が多すぎます」「もう少し固まって来たら一掃する」「はい……それよりこんな時によく食べられますね」「君も何か口に入れておきたまえ」「いえ、私は」「腹が減っては戦ができぬ、と言うだろう」「大佐の場合、雨が降っては戦が」「やかましい」

2010/10/18up

ドアを蹴るようにして開け、君を抱きすくめた。驚いた君は身体をこわばらせるが、次の瞬間ふっと弛緩する。気が済むまで抱擁してから、君の顔を見る。ほんのり染まった頬、潤んだ瞳。頼むからそんな目で他の男を見ないでくれよ、と願いながら、私は今夜最初のキスを君にする。「会いたかった、リザ」

◆◆◆

彼から想いを告げられた時、私は幸福感も充足感も味わわなかった。「私が彼の弱点になってしまう」そう思った。それでももうこの想いは止められない。引き返すことのできない恋、そしてたぶん最後の恋。「大佐、下がってください!」叫んで私は引き鉄を引く。止められないのならどこまでも行くだけ。

◆◆◆

「駄目です」「いいから上を脱ぐんだ」「恥ずかしいんです」「私の他には誰も見ていない」「大佐だから嫌なんです」「どういう意味だ」「……」「成程そういう事か」「……」「こんな時にセクシーな下着をつけている方がおかしいよ」「でも」「治ったら、期待させてもらおう」リザ発熱三日目の夜。